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「罠を仕掛けといて未必の故意なんて道理はとおりません!」ティーチウーマンが腰に手をあて、あごをクイッとあげる。「ウェポンマン、地球3周!」
こうして、ぼくはメディカルマンのメディカルチェックを受けてから着席し、破壊された教室はカーペンターマンによって補修され、ウェポンマンは罰として地球を3周するために飛び立った。
授業はもちろん、人智をこえている。
「52964かける35127は?」
「1860466428!」
「675321ひく35261かける11352は?」
「マイナス399607551!」
「そう、かけ算が先ですね。よくできました。では次、4かっこ82735プラス36291かっことじ、わる16は?」
「29756.5!」
これらの問答がティーチウーマンと生徒たちとのあいだで矢継ぎばやに交わされる。もっとも、これだけならビックリ暗算小学生にでも可能な範囲なのかも知れない。
こいつらが凄まじいのはここからだ。
「4534712!」
「はい、49832わる8かける728のこたえはご名答、4534712ですね。では次――」
「492453216!」
「はい、正解。6298かける543わる144分の1のこたえは492453216。よくできました」
特殊能力を持った連中が、問題を先まわりしてこたえてしまうのだ。
Rではじまるほうのリードマンは出題者の頭の中を先読みして、解答する。
一方、Lではじまるほうのリードマンは自分の用意しているこたえにたどりつくよう、出題者に暗示をかけて都合よくお題を誘導する。
時間をあやつることのできるタイムキッドなどは、出題の寸前に時間を止めてティーチウーマンの持つ正解をのぞき見てから、揚々とこたえをがなっている。
ぼくはというと、当然こんなハイスペックの饗宴についていけるはずもなく、ひたすら時が過ぎゆくのを待つというのがお約束だった。ここでヘタに悩んだ素振りでも見せようものなら、たちまちジーニアスマンやクレバーガール、ミスタースマート、スタディーマンにマティマティコボーイらが群がってきて、まるで赤ん坊をあやすかのように手とり足とり教えてくれようとするので要注意だ。
スーパーヒーローという連中はとにかく困っている人間を助けたがる習性がある。そのうえいつも全力で、まるでサボるということを知らない。この猛烈な善意のエネルギーをぼくひとりですべて受けとめるには、あまりにも荷が重過ぎる。
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