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三河争奪戦
小豆坂の戦いから一年がたった天文18年三月、事件が起きた
松平広忠が家臣の岩松八弥に城内にて襲撃を受けたのだ
厠から寝所に戻る途中の事だ
ダダッ!と短くも荒々しい足音が広忠の背から鳴り、何事かと後ろを振り向こうとした矢先
無言で迫る岩松八弥
手には広忠の父清康を殺した刀と製作者が同じ村正
ズッと腹をえぐる鈍い痛みが走る
足音に気づいた広忠は迫る八弥に危険を感じ本能的に身をよじりかわそうとしたのが吉となり致命傷をうける事は防いだがドクンドクンと傷口が熱く脈打ち多量の血が流れ落ちる
「誰かある!出合え!!」
広忠は腹部の激痛に耐えながら叫ぶ
叫びはしたものの激痛で力が入らずその場に膝を付ける広忠に八弥は無言のままとどめを刺さんと脇差しを持ち替え広忠の首を狙い村正を振り上げる
その時
「貴様!岩松八弥!!織田に寝返ったか!!」
と、廊下の角から叫び抜刀する植村新六郎
「な、何を…!」
八弥は驚き広忠にとどめを刺すのを止め慌ててその場から逃げる
ドタタタタ!っと植村新六郎に続き近習達が駆け付ける
「お主らは殿を頼む!儂は織田に寝返った岩松八弥を成敗いたす」
そう言うと植村新六郎は八弥を追いかけ城の大手門の先にある堀に追い詰める
「おのれ植村!儂を謀ったか!!」
「乱心者め!覚悟せい!!」
植村新六郎は聞く耳持たず八弥を一刀のもとに斬り伏せる
八弥は斬られた勢いで堀に落ちそのまま絶命する
その八弥の首を取り城内に悠々と戻る植村新六郎
その口角はやや上がっていた
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