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昼下がりに小豆坂の吉報を聞き、そこから家臣達を集め宴を始め早、数刻
日は落ち縁側で気持ち良い夜風を浴びる龍王丸
背には父の義元が酒の勢いに任せてはしゃいでいた
あまりのはしゃぎっぷりに定恵院はただただ苦笑いを浮かべるだけだったが、その隣にいる寿桂尼は違った
一見すると笑っているように見えるが目は笑っていない
「これ、雪斎はまだ彼の地にて汗水を垂らしていようにお主がその様にしていては帰ってきた雪斎に怒られようぞ」
と、義元を嗜める寿桂尼の言葉に義元は時が止まったかのようにビタッと身体を硬直させる
そして、ゆっくりと顔を寿桂尼にむける
「母上…それは言わない約束でありましょう…」
「そのような約束などしておりませぬ」
義元はから笑いで誤魔化そうとするも後に女大名と謳われる寿桂尼には通用せず
ピシャリと扇子で床を叩く寿桂尼にを見てササッと襟を正し上座へと戻る
「まったくお主はいくつになっても芳菊丸ですな。これは世話役である雪斎にもしかと叱らねばなりませぬな」
(因みに芳菊丸とは義元の幼名です)
「いやいや、母上!その様なことをされては麿が雪斎にそれはもうこっぴどく折檻されてしまいますので何卒穏便に…」
ピシャリ!と扇子で床を叩く音は気持ちが良いぐらい広間に響く
「自業自得です」
有無も言わさぬ寿桂尼の態度に義元はタラリとこめかみ辺りから一筋の汗が流れる
「龍王丸?龍王丸はどこぞ?」
家臣達の前で小言で責められるのは堪らぬと龍王丸を探すフリをする
「おお!そんなところに居ったかぁ!」
と、小走りで広間から出てそそくさと龍王丸がいる縁側へと向かう
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