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寿桂尼がキレた事でこれ以上の長居は危険と判断した龍王丸はササッと開け放たれたままの障子から部屋を出る
「それでは込み入ったお話もあるでしょうから私はこれで失礼いたします。」
笑顔でそういい障子をスーっと閉める
障子が締まりきる間頭を下げながらも秘かに部屋の様子をうかがうと
オロオロとする義元に[やっちゃった]というような苦笑いで龍王丸に早く逃げた方が良いと軽く手をふる雪斎
その様子にクスっと笑みを浮かべその場から立ち去る龍王丸
龍王丸が部屋から離れると先程まで騒いでいた三人はフッと静かになり真顔になる
そして雪斎が口を開く
「さて、これからの三河の事ですが…」
「わかっている、先程の話しでは織田の者が広忠の家臣と接触していると言うことは…」
「利用するしかありませんな」
しばし黙する義元に代わるかのように寿桂尼が雪斎に問う
「守山崩れを再現すると言うことですか?雪斎殿」
「はい、さすれば三河は今川の物となりましょう」
守山崩れとは松平家当主松平広忠の父、松平清康が天文4年に家臣の阿部正豊に惨殺された事件である
これには織田家当主の織田信秀の策略であるという説がある
「しかし広忠がいなくなったとして、そう上手くいくのかえ?」
寿桂尼の問いに今度は義元が答える
「上手くするのです。ようは織田の者が広忠の家臣と接触しているという事実があれば良いのです」
「さよう、その事実があれば誰が広忠殿を殺めてもそれは織田の陰謀によるものと言うことです。」
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