Tue.

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美百合は堪り兼ねて、プッとふきだす。 「何が可笑しい?」 「あなた……、面白い……。ほんと……、見た目に寄らず……」 ブワッハッハと大口開けて笑いそうになり、さすがに初回のデートでそれはマズイだろうと、無理やりこらえていたら、呼吸困難のアルパカみたいなしゃべり方になった。 「見た目は……、クールで、完璧主義で、無感情なロボットみないなのに、しゃべってみると、会話のピントずれてたり、皮肉言ったり……、とても人間らしい」 いや、流行りだから、アルパカに例えてみたのだが、この人は動物に例えると何だろう。 真剣に見つめると笑いも引っ込む。それぐらい迫力がある。 そうだ。美しい黒ヒョウだ。 髪も目も薄い茶色なのに、何故だろう。全身をまとう色がビロードの黒。 「あなたの顔……、とても綺麗」 思わずまじまじと身惚れてしまった。 「そんなに見るな」 照れたようにうっすら頬を染める龍一は、ちょっと可愛くもある。 「ねぇ。ハーフなんでしょ?」 「母がロシア人だ」 絵に描いたような現実だ。 この人のお母さんなら、さぞかしゴージャスな美人さんだろう。 「会ってみたいな……」 つい漏れた言葉に、 「会わせられない」 龍一の言葉は、刺さるほど冷たい。 反射で憎まれ口はたたいたが、さすがに落ち込んだ。 「わかってるよ、そのぐらい」 でも龍一は続けた。 「もうこの世にはいない。死んだんだ」 あまりにもやさしい口調で告げるのに驚かされた。 もしかして亡くなったのは最近なのだろうか。 「気にしなくていい」 相変わらずクールになりきれない龍一は、やさしく続けてくれる。 うん、うれしい。よし、今日はもう、徹底的に甘えちゃおう。
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