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「つまんない」
怒鳴る代わりに愚痴が出た。
すると龍一は、
「何だよそれ。自分一人はしゃぎまくって、こんなの『デート』って言えるか? そのあげく『つまんない』だと? ふざけんな。お前は十分楽しんでたさ、絶対に」
手放さない殺気そのままに、美百合に声を荒げる。
いや、乗り物に乗るのは楽しかった。
そうじゃなくて、龍一が美百合に何を隠しているのか、けっして話してくれようとしないのが『つまんない』のだ。
「楽しんでなんかない……」
言おうか、と思ったけれど、ちょっと迷った。
だって遊園地に殺気だなんて、あまりに不釣合いな取り合わせだ。
「だって、全然一緒に乗ってくれないんだもん。一人で並んで一人で乗って……。寂しいよ」
結局、龍一の与えてくれた理由に乗っかることにする。
「苦手なんだよ。ああゆう類の激しいヤツが」
龍一は言うけれど、絶対、ウソだと思う。
これだけ格好いい顔をして、絶叫マシーンに乗れないだなんてありえない。
きっと何でもスマートに乗りこなすはずだ。
そうじゃなくて、この人はきっと何かを隠しているのだ。
「ほとんど『一緒にいない』のに、こんなのデートって言えるか?」
『心が一緒にいない』のに、って言いたかった。
ちょっとヒネて龍一の口調をマネてみたのは、まだ龍一の緊張が美百合の気のせいだと思いたかったから。
けれど、やさしい彼は言ってくれるのだ。
「わかった、今度から一緒に並んでやる」
そんなことを言いたいんじゃないのに……。
悲しくて睨みつけていると、
「俺にどうしろって言うんだよ!? 何が望みだ? 言ってみろ! あれ乗るか? ああ、いいよ、乗ってやるよ。けど、シート尿で汚しても文句言うなよ」
龍一はついに逆ギレだ。
けれど『尿』って……。
そんなぶっ飛び発言で私を煙にまこうとするほど、この話題は触れちゃいけないことなんだ、とようやく分かった。
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