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「うひゃおぉぃ!」
パスタが鼻から飛び出るかと思った。
いやマジで。
この人から、まさかそんなセリフが来るとは予想もしなかった。
こんな普通の男みたいなセリフ……。
似合うじゃないか!
いやいや、普通の男が言ったら腹が立つだけのセリフだけれど、龍一が言うと何故こんなにサマになっているのだろう。
舞台演劇の極上のワンシーンみたいにきまっている。
そうなると、ヒロインのセリフは何て返せばいいのだっけ?
今日のパンツはレースじゃないけど……、ではないことはわかる。
いや、ここは一旦断った方がいいのだろうか?
清楚な乙女はこんな時、一体なんて言うんだ?
教えてママ。
と、天国の母親に頼ってみたけれど、答えなんぞ当然帰ってはこない。
美百合はゴクリと唾を飲んだ。
これ、もしかして、最初で最後のチャンスかもしれない。
思わず顔がにやけてしまう。
高いワインで酔ったのか、龍一のなんの気の迷いか知らないが、言い出したのは龍一の方だ。
後から後悔したって、もう遅い。
飲み込んだはずのパスタが喉に引っ掛かり声が出なくて、美百合はコクリとうなずくことで返事をした。
すると龍一は、さっきまで扇情的に揺らめいていた瞳の光を、あっという間に引っ込めて、ふんぞり返るように椅子の背もたれに腕を掛けると、
「俺、誰とでも寝るような軽い女は嫌い」
と言い放った。
なんですって!!
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