Tue.

12/18

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
「うひゃおぉぃ!」 パスタが鼻から飛び出るかと思った。 いやマジで。 この人から、まさかそんなセリフが来るとは予想もしなかった。 こんな普通の男みたいなセリフ……。 似合うじゃないか! いやいや、普通の男が言ったら腹が立つだけのセリフだけれど、龍一が言うと何故こんなにサマになっているのだろう。 舞台演劇の極上のワンシーンみたいにきまっている。 そうなると、ヒロインのセリフは何て返せばいいのだっけ? 今日のパンツはレースじゃないけど……、ではないことはわかる。 いや、ここは一旦断った方がいいのだろうか?  清楚な乙女はこんな時、一体なんて言うんだ?  教えてママ。 と、天国の母親に頼ってみたけれど、答えなんぞ当然帰ってはこない。 美百合はゴクリと唾を飲んだ。 これ、もしかして、最初で最後のチャンスかもしれない。 思わず顔がにやけてしまう。 高いワインで酔ったのか、龍一のなんの気の迷いか知らないが、言い出したのは龍一の方だ。 後から後悔したって、もう遅い。 飲み込んだはずのパスタが喉に引っ掛かり声が出なくて、美百合はコクリとうなずくことで返事をした。 すると龍一は、さっきまで扇情的に揺らめいていた瞳の光を、あっという間に引っ込めて、ふんぞり返るように椅子の背もたれに腕を掛けると、 「俺、誰とでも寝るような軽い女は嫌い」 と言い放った。 なんですって!!
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加