Tue.

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カッカする頭は、いくら歩いても冷える気がしない。 それでも後ろから走ってくる、美百合とはスライドの違う足音だけはちゃんと聞こえていた。 頭から追い出すつもりが、つい習慣で探してしまう龍一の気配に、美百合はあまりにも、自分が惨めで泣けてきて、どうしようもない。 こちらは全力の大股歩きのはずなのに、簡単に追いつかれ横に並ばれて、 「アバズレに、まだ何か用?」 顔も向けずに言い捨てた。 とにかく悔しくて仕方がない。 とっておきのミュールなんか履いてこずに、スニーカーにしておけばよかった。 「時間も遅いし、送るよ」 何を今さら、心配したような口をきくのか。 「ヤル相手探してるの! 邪魔しないで」 こうなったら徹底的に『アバズレ』を演じてやる。もう実際にそうなったって構わない。 「悪かった。こんなつもりじゃなかった。頼むから車まで戻っ……」 「触らないで!」 つかもうとした龍一の手を、腕を振って拒絶した。 振り払った拍子に見えた龍一の顔は、本当に心底こまっていて、龍一にこんな顔をさせる自分が、ますますイヤになって、泥になって消えてしまいたかった。
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