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美百合が、自分でも病んでいると思うこの症状も、12時間もベッドの中でおとなしく過ごすと、ずいぶんと楽になる。
声を出さずに泣いたせいか、追いつめた精神のせいかはわからないが、ずっしり重たい頭を振って、いつもの美百合を取り戻したのは、お昼も大分まわった頃だった。
「あれ? そういえばあの人、何しに来たの?」
ようやく、龍一が美百合を尋ねて来たことを思い出した。
「ちょっとは反省して、謝りにきたんだったりしてね」
いつもの調子を取り戻しつつ、少しほくそ笑んでみたりする。
落ち込んだ気持ちを振り払い、忘れたフリを装うのは、美百合は得意で慣れっこだ。
「ふふん」
と鼻歌なんぞ歌いながら、トイレに行くために廊下に出た。
1DKのアパートの廊下に出れば、左にはトイレとバスルーム。そして右手には玄関がある。
そういえば、あのドアの向こうに、龍一は立っていたのだ。
改めて思い出してみれば、龍一が美百合を尋ねてくるだなんて、それはまるで夢のような出来事で。
本当に夢だったんじゃないかと、美百合は戯れにドアに忍び寄ってスコープを覗いてみた。
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