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――油断した。
いつもなら父親関連のニュースを目にした後は、美百合は三日はテレビを見ない。
今のバイト先を選んだ理由も、よほどの大事件でも起こらない限り、安易にテレビを付けないクラッシックカフェだったからだ。
面白半分に流されるテレビの情報は、無遠慮に乱暴に、美百合の心を引き裂いていく。
美百合は手を伸ばして、最初に触れたものをテレビに向かって投げた。
金属音をたててぶつかったのは、枕元にあった目覚まし時計だ。
またつかんで投げる。
今度は枕。テレビの画面は変わらず、父親の映像を映し続けている。
スタンドライト、ペンたて、手鏡、化粧品に化粧水に乳液のビン。
まさに手当たり次第に、触れるものすべてを投げつけた。
心を乱すと現れるはずの母親は、今は何故か現れてくれない。
ガチャンと砕けるガラスの音が、まるで美百合の叫びのようだ。
ガチャン、ガチャン、ガチャン!
全部、全部、砕け散ってしまえばいい!
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