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テレビの報道は、まだ迫田博文の話題を提供している。
私はこの父親の血族。
それから、信也にもてあそばれた記憶。
混沌としたこの滅茶苦茶な部屋。
美百合はぐらぐらする思考を抱えながら、部屋の隅にうずくまるようにして座った。
傍らに転がっていた、ベッドから引き裂くようにして剥がした布団を手繰り寄せて、くるくると身体に巻きつける。
「こんなもの見るな」
いつの間にか食い入るように見つめていた、つけっぱなしのテレビ画面を、龍一がリモコンを手に取って、簡単に消した。
たったそれだけのことで、たったそれだけの龍一の行動で、美百合は心を縛る鎖からふわりと解放された気がした。
……なに、これ?
腰が抜けるような安堵に思わず息をつくと、身体の力がクタリと抜ける。
なんでこんな簡単なことが、さっきまで出来なかったのだろう。
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