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いつの間にか、龍一の左手は美百合の背中に回されていて、あっという間に、その広い胸に美百合は捕えられていた。
とたん、ドクンと脈打つ心臓の音。
その確かな響きを全身で感じて、美百合は欲しかったものはこれだと、強く感じた。
ずっと耐えていた声が、あふれだすようにほとばしる。
湧き上がって、噴き上がって、まるで子どもみたいに声をあげて泣いた。
美百合の叫びに、龍一は全身をきつく抱きしめてくれる。
そして、吐息さえも美百合を痺れさせるその甘い声で、耳元でささやくのだ。
「言えよ。どうして欲しい?」
声は甘やかなのに、問う言葉はイジワルだ。
美百合の答えは決まっているのに、跳ねあがった心臓のせいで言葉にならない。
美百合はしゃっくりをひとつして、喜びの鳴き声を何とか嗚咽にまで抑えた。
すると龍一はますますイジワルに、
「またお姫様抱っこか?」
美百合はもう、ヘタクソな冗談なんか真っ平だ。
「そばに……、いてくだ……さい……」
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