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「はなしてよ……」
なんとか言葉にして紡いだ。
「できない」
だが龍一は拒絶する。
それはもう美百合にとって恐怖でしかないというのに、低い声はそれでもやさしく耳に響く。
龍一の頭が、美百合の肩にもたれかかってきた。
そのまま喉笛を喰いちぎられるかと体が固まったが、けれど龍一は別に乱暴なことをするわけでもなく、そのままじっとしていた。
「……家に帰りたい」
美百合はその静けさにすがるように、唯一の願いを言ってみる。
龍一がここで豹変して、たとえ殺されたとしても、それはきっと早いか遅いかだけの違いだ。
すると龍一は、そっと美百合を解放した。
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