Thu.

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龍一はその美しい瞳に、闇から溶け出したような珠玉の珠をあふれさせ、次から次へと雫を頬にこぼした。 死ビトの流す涙は、びっくりするくらい綺麗だ。 「もう逢わないつもりなら……、死ねって言ってくれ。そしたら迷わず、今ここで、俺は死ぬ」 なんだろう、龍一のこの突然の感情の発露は。 ……もう死ビトになんか見えない。 まるで嗚咽のような声まで漏らして、龍一は美百合の肩にすがりつく。 この、まるで人間のようにみっともなく慟哭する様は、一体なんだろう。 美百合では龍一の体重を受けとめ切れなくて、ついよろめいてしまうも、そんな頼りない美百合より、この龍一の方がよっぽど砕けてしまいそうに見える。 龍一はふらふらする美百合の体の安定を探そうと、せわしなく体勢を変える。 それは壊れてしまった何かを、まるでそうすれば元に戻るんだと固く信じて、必死になって欠片を拾い集めているように見えた。 美百合がゆっくりと龍一を見上げると、 「もう愛してないなら……、頼むから、俺を殺してくれ」 龍一は言った。 美百合はその言葉に、龍一のホントウを見た気がした。
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