Thu.

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朦朧とした意識と、まだ余韻に揺さぶられる身体をくったりと龍一に預けて、やさしく髪を梳く龍一の指に目を細めていると、 「今日は寝ないの?」 と龍一が聞いた。 ゆるゆると目をあげ、 「なんで?」 と聞き返すと、龍一はちょっと息をついて、美百合の頭の下から腕を抜き取り、ベッドを軋ませてその身体を起した。 明るい照明の下にあきらかにされた龍一の身体は、恐ろしいほどの数の傷痕が飾っていた。 美百合の目の前の脇腹にも、背中がわの肩から腕にかけても、えぐれて引き裂かれたような傷がある。 あれは銃創だろうか? 盛り上がった後背筋には、刃物で切りつけられたような痕が数箇所。 指を伸ばして、その傷に触れようとしたら、龍一は手をとって美百合を拒否した。 「少しでも……、油断するとこうなる」 そう言って、龍一は苦々しく微笑んだ。 この傷痕は、けっして勲章なんかじゃないのだろう。 龍一のその心を砕いていった、ひとつひとつの原因なのだ。 これを美百合に見せまいとして、龍一は美百合が眠ることを望んだのだと悟る。 美百合が触れることも許さないほど、これらは龍一の汚点なのか。 殺し屋の龍一にこれまでどんなことがあったのだろう。
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