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「あの……、お仕事は何されてるんですか?」
声をかけるきっかけは、やっぱり仕事か天気の話だと、オーナーにアドバイスされたことを忠実に守って話しかける。
けれどかえってきたのは、恐ろしいほどの無反応。
まるで美百合がそこにいないかのように、バタートーストにちょっぴりハチミツを垂らした美百合の特製モーニングにかぶりついている。
「ええっと……」
食べ方は男らしいことこの上ないが、
「聞こえてます?」
かなりムカつく態度だわ。
「あのー、お仕事何してるんですか?」
腹が立つのでイヤミを込めて、声を荒げて繰り返す。
言ってから、
しまった……
と思った。
この感情の爆発は私の悪いクセ。
思い立ったが吉日じゃないが、思ったことはすぐ顔に出る、声に出る、態度に出る。
どうしたって止められない。
すると案の定、目の前のこの人はゆっくりと顔をあげた。
「悪いんだけど……」
「うひょっ!」
と、真正面から見据えられると心臓が跳ね上がる。
この人はやっぱり綺麗だ。
ハーフらしい彫の深い顔立ち。深く吸い込まれるような瞳。
とても私と同じ人間だとは思えない。
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