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なんだか変に名残惜しくて、同じコマをとっている友人としゃべっていたら、電車に一本乗り遅れた。
仕方なくオーナーに電話して、少し遅刻する旨を伝えて、それでも小走りでカフェに向かって足を進めていた。
すると、今カバンにしまったばかりの携帯電話が着信を告げる。
美百合は手探りで携帯を探して、電話に出た。
「今すぐ、実家に来い」
名前も告げずに命令形。
でもその艶やかな声で、相手はすぐにわかった。
龍一だ。
どこで美百合の番号を調べたのか知らないが、ミッション・インポッシブルなら、まあ簡単なことなのだろう。
「初めて電話くれるのに、その言い方はないんじゃない?」
美百合が抗議すると、
「父親を殺して欲しいんだろ? その望み、叶えてやるから今すぐ来い」
また面白くない冗談か。
龍一はそれだけ言うと、素っ気なく通話を切ってしまった。
「もう! 私に『捨てないで』って泣きついたくせに! 私の気持ち知った途端、偉そうに」
少しだけ、胸にわだかまる不安を感じたが、そんな心配を振り払うようにして憎まれ口をたたいた。
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