Fri.

4/17

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
家の一番北側にある、陽の光があまり差し込まない、父親の書斎のドアを開けた。 「!」 美百合は絶句した。 そこには手足をガムテープで縛りあげられ、ご丁寧にも口までそれで塞がれた父親が、ソファーの上に転がされていたのだ。 一瞬、自分の予感が当たって、泥棒に入られたのかと悲鳴をあげかける。 けれどその傍らに、凝ったように佇む黒い闇を見た。 「あなた……、ホントに?」 龍一なの?  と聞いたつもりだった。 龍一が美百合の父親に、こんなことをする理由が思い出せなかった。 しかし、 「おまえの為なら、何でもする」 龍一は低い声で言った。 美百合はようやっと、夕べのふたりのやりとりを思い出す。 美百合が口にした願い、 「私の父を殺して」 に対して、龍一は何て答えた?  ずいぶん間をあけたが、こう答えたはずだ。 「わかった」 と――。 美百合の心が冷えた。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加