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さて、こんなに綺麗な顔から、一体どんな罵詈雑言が飛び出すのかと、9割恐怖と1割楽しみな気持ちで、美百合は待った。
すると、
「食事は静かに摂りたいんだ」
なるほど、そう来たか。
「じゃあ……、食事終わったころにまた来……」
「それもやめて欲しい」
最後まで言わせてもくれない。
でもポンポンとかわされるやり取りに、美百合はなんだかうれしくなった。
だってこれまでは、
「いつもの」
「はい」
で、終わってしまっていたのだから。
「人と話すの、嫌いなんだ」
でもこう言われてしまうと、困ってしまう。
どんなやりとりでも、私はあなたと話すのがこんなにも楽しい。
「でも私……あなたと話が……」
すると、ついにこの人はトーストを皿に戻した。
放り投げないところが、お育ちの良さを物語っている。
「要件を聞こう。手短に頼むよ」
美百合は心でガッツポーズ!
いま要件を『聴く』って言ったよね。
『聴く』ってことは私を『受け入れた』ってことよね。
はなはだ大きな勘違いをする美百合だが、これまでその強引さだけを武器にして、世の中を渡ってきた。
なかなか世間知らずの甘ちゃんではある。
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