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「クソアマ!」
決死の勢いでわめき続ける美百合の抵抗に、ついに信也の本性が姿をあらわした。
その右手を振り上げて、美百合を暴力で屈服させようとした。
やれるもんなら、やってみろ!
美百合は負けるものかと睨み返す。
大好きな人から愛を受けた私なら、きっと強い!
絶対、負けてなんかやらない!
ところが、信也がピクリと動きを止めた。
振り上げた手もそのままに、入り口のドアを振り返る。
「坊ちゃん、彼女に嫌われちゃったかな!?」
おやおやと、肩でもすくめそうな余裕の表情で、龍一がそこに立っていた。
「てめぇ、何で……?」
信也の問いかけも終わらない間に、龍一は矢のように飛んでくると、信也の頬を殴りつけた。
ぐえっとカエルがつぶれるような声を出して、美百合に圧し掛かり倒れてくる信也の身体。
指一本でも怖気が走るのに、こんなに全身べっちょり密着だなんて、勘弁してほしい!
「やだ、キモい、ほんと無理」
ついつい喚いてしまいながら、全力でその身体を押しのけると、あまり抵抗もなくグラリと浮いた。
美百合は這いずるようにして、その身体の下から脱出した。
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