Fri.

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美百合の泣き声がすすり泣きに変わったころ、龍一がそっと言った。 「時間がない。行こう」 美百合は顔をあげる。 「どこへ?」 何も聞かされていない。何も知らない。 しかし龍一は答えをくれず、代わりに自分の着ていたブルゾンを脱いで、美百合にすっぽりと被せるように着せた。 ご丁寧にファスナーまできっちりあげての、至れり尽くせりだ。 ただしサイズが違いすぎて、袖の長い『はた坊』みたいになったが。 「おいで」 龍一のやさしい誘いにおとなしく肩を抱かれて書斎に戻ると、ガムテープの拘束からちゃんと解放された父親が、ソファーに座って自分の手足をさすっていた。
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