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さてお次は、とばかりに龍一は美百合の方を見た。
だけど美百合は動かない。
バカなことばかり想像して、これまで必死になって考えないようにしていた不安が、ついに明かされようとしている。
龍一はセスナ機から離れて、ゆっくりと美百合に近づいてきた。
そして言葉の代わりに、美百合の身体を強くギュッと抱きしめた。
やっぱりだ!
美百合の目にはたちまち涙がたまる。
望んでも叶わないとわかってはいるけれど、それでもやっぱり言わずにはいられない。
「一緒に来て」
それは祈りにも近い願いで……。
見上げる先には切なげに揺れる龍一の、美しい闇を秘めた瞳があった。
ふいに膝の後ろから、龍一の腕に腰掛けるようにして抱き上げられ、そして背の高い龍一の顔を見下ろす姿勢で美百合は収まった。
見下ろす龍一の瞳も願うように揺れている。
龍一も祈っているのだろうか……。
「俺はまだ、やらなきゃならない事がある」
龍一は苦しそうに真実を告げた。
だけど続けて、
「全て片付いたら、必ず迎えに行く」
と美しい夢を語った。
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