Sat.

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美百合は、その美しい絵画のような、完成された音楽のような未来を信じて、 龍一を信じて、 その首に腕を巻いて、頬と頬をくっつけるように抱きついた。 「オバサンになる前に、必ず迎えに来て」 美百合の一流ジョークも、 「50年後までには行けるかな」 ヘタクソな龍一の冗談で台無しだ。 「そしたら私、お婆さんじゃん!!」 ついポンと言いかえしてしまう美百合の剣幕に、龍一はやさしい微笑みを贈ってくれた。 「心配するな。俺もお爺さんだ」 ……やっぱり、龍一の冗談は面白くない。 美百合は龍一の手によってセスナの機体の中に降ろされる。 泣くまいと思っていたのに、次から次へと涙が溢れてきた。 こぼれだす。止まらない。どうしようもない。 だけど、涙を拭くために一瞬でも目を閉じて、この美しい男を見ていられる時が減るのがイヤで、美百合は必死になって両目を見開いていた。 龍一も、美百合をやさしい目で見つめながら、 それでも、自らの手でセスナ機のドアを閉めた――。
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