年神様の落し物

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 あれから半年以上が経った。  私は純人間の魂に戻れた。のだけれど、私の生活の半分は年神様のそれだった。  私は部下の天使と一緒に、日本列島への上陸を間近に控える台風と、対峙している。 「あの男は絶対に許さないわ! 私のせっかくの夏休みをこんなことに消費させるなんて!」  同年代の若者は海や山でキャッキャッウフフと盛り上がっているのを想像すると、余計に腹が立つ。 「女神様、そろそろ台風の進行方向を変えるための手立てをーー」 「私は女神じゃない! 何度言ったら分かるの? このダメ天使! 略してダ天使!」 「そ、その省略の仕方はあんまりです……」  天使に八つ当たりしても、私の怒りは収まらない。  私はあの時、年神から偶然もらったお年玉で天使を買った。忠実なる下僕だ。これだけなら許せる。  年神はあの後、魂の半分を失った状態でさらに人々に魂を分け与えた。結果、ほとんどの力を失い、今は私の城(一人暮らし……だったマンション)で人間のように暮らしている。平日はもっぱらスーツを着て働きに出ている。そして、日本列島に何か問題が起こるたびに、私に年神の仕事を押し付けてきた……。  私はというと、年神に代わり、天使を使役して神さながらの働きをするようになっていた。実社会で生きるために、そっち方面でもせっせと働いている。おかげで休む暇がない……。  へとへとになって家に帰ると、エプロン姿の年神が自分で作ったチャーハンを食べていた。 「よう、おかえり。ニュースで台風の状況は観ていたが……。もぐもぐ……。もう少し自然に軌道をずらせないものか?」 「むかっ!」  私はふざけた男の頭を殴り、チャーハンを奪い取った。 「ぶ、無礼者! 何をする!?」 「無礼者はどっちだ、バカ」  早くこんな生活は終わって欲しい。頑張れ~私~。年が変わるまでの辛抱だ。 「!?」  …………やだ、このチャーハン結構いける。
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