2.ある猫の章

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ある日のこと ご主人様は大きなビルの中の売り場まで私を連れて行ってくださいました 誕生日だとか何とか言っておられましたが 私には何のことかわかりません そういえば、ご主人様にお仕えするようになって、もう一年経つのですね ご主人様は私に新しい服を買い与えてくださいました これが本当の女の子の上等な服というものなのですね 私は可愛い女の子になれたような気分でした ご主人様は新しい服を着た私を嬉しそうに眺めておいででした 私はちゃんとご主人様の「彼女」になれたのでしょうか? うかれ気分の帰り道だったのですが 何やら悪い予感めいたものがありました ご主人様と生活するようになってからは、そんなことがわかってしまうのです 目の前で小さな男の子が大きな車とぶつかりそうになっています ご主人様は男の子に駆け寄ろうとしていました ご主人様はいいのですよ 私は猫ですから、全然大丈夫なのです 私はそう言って素早く男の子に駆け寄りを男の子を抱え込んで跳びました でも、ダメでした 跳ぶのと同時に私は車にぶつかったみたいです くるりと回転して着地するつもりだったのですが 今は猫ではなく人間の女の子だったことをすっかり忘れていました
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