2.ある猫の章

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ご主人様の私を叱るような大きな声が聞こえましたが 私の体は地面に叩きつけられてしまいました ご主人様、私は失敗したようです でも、男の子の元気な泣き声が聞こえます よかった、 男の子は助かったようです ご主人様に誉めてもらえるでしょうか? いつものように頭を撫でてくださいますか? ご主人様は猫に戻ってしまった私に駆け寄り私の体を抱いてくださいました 私は予定より早くご主人様の元を去る時が来たようです ご主人様が私の頭を撫でながら大きな声で何やら言っています ご主人様、ごめんなさい もう目の前が暗くなってご主人様が何を言っているのかわかりません ご主人様、ごめんなさい もうご主人様のお部屋の掃除はできません 神様、どうか、ご主人様の声をお聞かせてください ご主人様のお顔から私の顔に何か落ちてきました これってご主人様の涙なのでしょうか? ご主人様、私ってただの猫なのですよ 意識が遠のいていく中、ご主人様の声がしました 人の天国と猫の天国って一緒なのかい? 最後にそのお優しい言葉だけは、はっきりと聞こえました 私はご主人様にちゃんとお答えしなければなりません 私は懸命に口を動かしました いいえ、一緒ではございません、別々なのですよ ご主人様、 私はちゃんと言うことができましたよ
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