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元宗義博の父親の弟の家に、男の子が生まれた。その子の名前は、元宗優と名付けられた。ヨシにとっては可愛く、かけがえのない存在だ。
一方のスグルは、隣家の西條病院の双子の手に育て上げられていた。と言っても過言では無かったほど、手を掛けられていたのだ。
普段は滅多に会わないが、西條病院の双子の弟の方タケシがスグルの事を教えてくれるのが嬉しいのだ。タケシと遊ぶというのを名目に、何度西條家に行ってはスグルも含めて遊んだ事か。どうして、こんなに離れてる場所へ住むのか、親の考える事は分からなかった。
スグルに向ける自分の思いは誰にも分からないし、スグルにも知らせようとは思わない。そう思っていた。だけど、見抜かれていたのだ。
タケシと、もう一人。それが隣家に住んでいるコウジだ。
今日は天気が良く、花見日和。
元宗一家は、兄弟揃って二家だけでの花見をしている。
「ヨシ兄っ」
自分の名を呼んで元気よくトトトッと走ってくる可愛い従弟は、その小さい身体で抱き付いてくる。
「ヨシ兄、大ちゅき」と、嬉しそうな表情と笑顔が堪らないほど可愛い。
俺も、それに倣ってやる。
「スーちゃん、可愛い。大好きっ」と言って、抱きしめてやる。
「可愛いだけ余計だよ」
むくれる2つ年下のスグルは、本当に可愛い。
そんな俺たちを仄々と見守ってる人は、俺たち元宗家の人間。
詳しく言えば、俺の両親と優の両親と妹だ。
スグルの父親が、俺の父親に酒を注いでいる。
「兄貴は、もう一人欲しくないのか?」
「一人でたくさんだ」
「一人っ子は寂しいぞ」
「そういうお前は手が早いよな」
一方、こちらは女同士。
「赤ちゃんは、本当に可愛いわねえ」
「ありがとうございます。お義姉さん、もう一人産んじゃいましょうよ」
「産むのはいいけど、その後が問題よね」
「たしかに、そうですよね」
そんな母に、言っていた。
「おかーちゃん。俺は、スーちゃんさえいれば良いんだからねっ」
その言葉が聞こえたのか、お母ちゃんはスグルのお母ちゃんに言っていた。
「ほらね、これだもん。ヨシが弟か妹を可愛がってくれるのか、それが不安なのよ」
「大丈夫ですよ。優だって、産まれてくるまでは我関せずだったのですよ。ヨシ君も大丈夫ですよ」
「まあ、優ちゃんまで」
2人して笑っていた。
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