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「アキ…こんな時間にどこへ行くんだい?」
咎めるような声音もいつも通りの彼だ。
「なん…で?」
彼は今東京に居るはずだ。
この時間ならまだ店の営業時間で平日とはいえ客足の途切れない忙しいころなのに。
「アキ…少し…外を歩こうか」
目に涙を溜めたアキを気遣って、
正司がコーヒーの会計を済ませラウンジから出てくる。
「お待たせ」
「正司…さん」
ニコッと笑う端正な顔立ち――。
優しく背中を押され、
彼のリードに従った。
「夜でもまだ暑いね」
「うん…」
さすがに深夜の街はひっそりと静まり返っていた。
もし正司に声を掛けられず一人で出てきてしまったら…きっと途方にくれていただろう。
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