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だから自分の気持ちまで見失いそうになったんだ――。
「本当だよ。
正司さん」
「…ありがとう」
「やだな。
お礼なんて」
「嬉しいよ。
アキ、
手を繋いでも?」
「…うん」
誰も居ない通りを、
手を繋いで歩いた。
自然と歩く速度が落ちて、
二人とも足元ばかり見てしまう。
頬に当たる夜風が気持ちよくて、
繋いだ手が暖かくて。
自分と背格好の変わらない恋人は、
視線を送ればすぐにこちらを向いてくれた。
「………」
無言のまま立ち止まり、
キスをした。
月が雲に隠れたのを良いことに、
何度も、
何度も、
繰り返し――。
「…ウチに…帰りたい」
「そうだね…帰ろう。
朝早い便で」
「うん…」
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