第1章

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だから自分の気持ちまで見失いそうになったんだ――。 「本当だよ。 正司さん」 「…ありがとう」 「やだな。 お礼なんて」 「嬉しいよ。 アキ、 手を繋いでも?」 「…うん」 誰も居ない通りを、 手を繋いで歩いた。 自然と歩く速度が落ちて、 二人とも足元ばかり見てしまう。 頬に当たる夜風が気持ちよくて、 繋いだ手が暖かくて。 自分と背格好の変わらない恋人は、 視線を送ればすぐにこちらを向いてくれた。 「………」 無言のまま立ち止まり、 キスをした。 月が雲に隠れたのを良いことに、 何度も、 何度も、 繰り返し――。 「…ウチに…帰りたい」 「そうだね…帰ろう。 朝早い便で」 「うん…」
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