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流れでブラックにピンクが攫われるシーンへと突入し、操は無理やり演技を合わせた。ブラックとレッドの両方から取り合う様に腕を引かれ、スピーカーから響くアテレコの台詞に紛れて叫ぶ。
『助けてレッド!(助けなくていい!)』
『おい、レッド、いつもの勢いはどこにいったんだ?(お前、操に近寄るな!)』
『ブラック! ピンクを返せ(俺のピンクさんの手を放せ!)』
『助けて! レッド!(助けてくれ、黒宮!)』
操は観客には分からない様に黒宮の方へと寄る。どちらが敵なのか分からなくなった状況の中、間一髪ブラックに連れ去られるシーンに突入する。
『ふははは! 再びピンクはもらっていくぞ』
黒宮に抱きかかえられながら、ステージ裏に運ばれていく。そこまできて、操はようやく安堵のため息をついた。
(絶対に、許さないからなっ)
あれだけ釘を刺したのに、彼はいったい何を考えているのだろう。
それからショーは台本どおり終盤へと突入したが、黒宮演じるブラックがレッドに対してだけは容赦がなかった。本気の黒宮との殺陣に余裕を削がれたのか、それから赤神が予定外の行動をとる事はなかった。
しかし、いつもより白熱した二人の演技は観客を盛り上げ――、新任レッドの初舞台は、良くも悪くも大声援で幕を閉じたのだった。
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