情熱戦隊シャレンジャー ピンクさんとレッド君の事情

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***** 二十時を過ぎると、辺りで練習していた役者は疎らになる。 操はテーマパークに併設されている第一スタジオで練習をしていた。スタジオといってもそれほど大きいものではなく、テニスコート一つ分くらいのものが第一と第二で分かれているだけだ。 (今日はさすがに疲れたな) 赤神の初公演というだけでも気を使ったのはもちろん、彼の奇行の所為で余計に神経をすり減らした。 気鬱な表情を見せてしまった所為だろう。黒宮には、こんな時くらいゆっくり休めと言われたが、どうしても確認しておきたい動きがあって一人残っていた。 五ヶ月後の十一月中旬、年に一度のスペシャルショーが開かれる。秋の終わりに開催されるそのショーは、ピンクが主役のストーリーでアクロバティックな要素が多く含まれるからだ。 操は前方を見据えた。 そのまま走り込み、前方倒立回転飛びから伸身宙返りのひねりを合わせて、女性らしい動きを表現する。 中学から高校を卒業するまで習っていたバレエ。そして高校と体育大学で培った器械体操の技術――、美しく華麗と評価を受けてきた動きだ。 何度かその組み合わせを繰り返し、操はふと立ち止まる。スタジオの騒音が遠くに聞こえた。 (僕は……) 焦点を合わせるでもなく先を見つめ、小さく肩を落とす。 ふと、ときおりこみ上げる不安を抱えながら、ぼうっとその場に立ち尽くした。無意識に深いため息が零れる。
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