情熱戦隊シャレンジャー ピンクさんとレッド君の事情

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シャレンジャー結成以来、操はヒロイン役として『女性』を完璧に演じてきた。 当時はレッド役を志望していたが、身長の所為でそれは叶わなかった。それでも演技に懸けるプライドは何も変わらなかったから、女性らしい動きを表現できるよう、日々努力を重ねてきた。その甲斐もあって、巷でピンクは完璧に『女性』として通っている。そして演技も流麗だと高い評価も得てきた。 もちろんそれは喜ぶべき事だったけれど、その評価が積もれば積もるほど、重たい枷を嵌められた様な苦しさも感じてきた。 (きっと僕の素性を明かしたら、みんなは幻滅するんだろうな) みんなが応援してくれているのは『女性』としてのピンクであって、『男性』としてのピンクではない。 本当の自分を誰一人として見てくれないようなもどかしさに、操は悩み続けてきた。 スーツアクターは職業柄、体型に合わせて男性が女性役をこなすことも少なくはない。だから、そんなことで悩む方がおかしかった。 けれどそれを割り切ろうとするたび、小さい頃の記憶が足元をすくう。 操は小学一年の頃に、交通事故で母を亡くした。買い物帰りに車に轢かれ、病院で息を引き取ったのだ。 玄関で「いってらっしゃい」と言ってくれた母が、その夜、病院のベッドで冷たくなっていた。 いつも笑顔で見送ってくれた母が、そして、おいしい料理を作ってくれた母が。その日を境に、自分の世界から居なくなった。
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