情熱戦隊シャレンジャー ピンクさんとレッド君の事情

22/177
前へ
/177ページ
次へ
「なんで、こんな時間に君がいるんだ」 操は、そっけなく切り返した。 公演後に怒鳴りつけたこともあって、なんとなく気まずかった。 「第二スタジオで練習をしていたんです。その、……みんなの足だけは引っ張りたくなくて」 疎ましくもせず、赤神は額をタオルでぬぐっている。絡んでくるなら文句の一つでも言ってやろうと思ったが、そんな事を言われると、言葉のやり場をなくしてしまった。操はふと赤神を見上げる。 彼は他の日も、こうやって人知れず練習をしていたのだろうか。 思えば、初舞台にも関わらず赤神の演技は完璧だった。予定外の行動には困らされたが、逆に言えばそれだけの余裕があったという事だ。 「もしかして、毎日こんな時間まで残っていたのか」 「言うのも恥ずかしいから、ずっと黙っていたんですけど」 頭をポリポリと掻きながら、赤神は苦笑する。努力を見せびらかすでもなく、その態度はあくまでも謙虚だ。まるで、部活帰りの運動部の学生がいるようだった。 真っすぐで初々しい姿に、ふと昔の自分を思い出す。 当時は素性がどうこう関係なく、無心に練習に没頭していた。演技をする事が純粋に楽しくて、ただそれだけで満たされていた。 それが、いつからこんな風になってしまったんだろう。 (……懐かしいな) 邪心のない赤神に昔の自分を教えられた様な気がして、気持ちが少しだけ軽くなる。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加