情熱戦隊シャレンジャー ピンクさんとレッド君の事情

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「実は俺、アクションスタジオに入る前は劇団に所属していたんです。……その、世間一般に言う『俳優』を目指していて。ずっと俳優に憧れていて、小さい頃に劇団に入団したんです」 『俳優』というイントネーションをあえて変えたのは、今の仕事と区別する為だったのだろう。スーツアクターも広義の意味では『俳優』だ。 (そういうこと、か) 操は納得する。 練習の時からなんとなく感じていたが、赤神の演技には表現力が備わっていた。たった数年にしては仕草に深みがあると思っていたが、それは劇団時代に培ったものなのだろう。 それにしても、容姿も申し分ない彼がどうしてこんな場所にいるのだろう。 「だったら、俳優を目指せばよかったじゃないか」 「もちろん機会があれば、俳優として活躍したいと思っています。でも――」 そこまで言うと、赤神は視線を逸らすように遠くを見つめてしまった。憂うでもない、どちらかといえば笑みの宿った穏やかな表情だった。けれど、この先は踏み込んだらいけない様な気がして、操はそれ以上を聞かなかった。 二人の間を夜風が通り過ぎていく。テーマパークからは、パレードの予行練習の音が聞こえた。まるで遠くで開かれている祭囃子の音を聞くような、哀愁にも似た心に滲むようなざわめき。――そんな無言の時間が、ただ心地よかった。
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