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荷物を自室に置いた後、操は赤神の部屋へと上がった。
彼の部屋は綺麗に片づけられ、同じ間取りとは思えない程広く感じられた。ベッドが一つに、中央に置かれた丸テーブル。必要最低限の家具に、綺麗に道具が片付けられている。
整理整頓が苦手な操にしてみれば羨ましい限りだ。
訊けば、一人暮らしをしていた時期が長く、家事全般は人並みにできるのだと言う。言葉通り赤神は手際よく料理を温め直し、それから二人で夕飯を食べた。
肉ジャガや野菜スープ。
こうやって食卓を囲むように、家庭的なものを食べたのは、母が亡くなって以来かもしれない。時間のない中で家事をしてくれていた父とは、ゆっくりと食事を味わう余裕もなかった。それくらい食に対しては、想い出がないのだ。
皿洗いは操が引き受け、それから赤神と他愛もない話をした。
「俺の実家は農家をやっているんです」
「それで野菜がたくさん送られてくるわけか」
「毎回大量に送られてくるので、食べるのがいつも大変で」
段ボール箱に入った野菜を指さされ、なるほどと納得する。苦笑する赤神につられて、思わず笑みがこぼれる。いつのまにか色々と興味が沸き、操はらしくもなく聞きこんでしまった。
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