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その名は乙女
「おーい冬夜、正治はどうした? もう定時なはずだが・・・」
コンビニにて立てこもり事件が発生したという通報を受け現場前の公道に到着した捜査一課の佐藤警部は開口一番、部下にそう訊いた。
現在コンビニの向かいの道路の一部を閉鎖し、簡易テーブルを設置している。そこに複数の捜査員が集合し、佐藤からの指示を待っていた。
佐藤からの質問を受けた部下は、投げやりな態度で応える。
「昨日は愛しい愛しい姪っ子の紬ちゃんとお泊りデートだから今日は余韻に浸りたい、自分が連絡するまで連絡すんなって言ってました」
「・・・・・・あいつの女好きは何とかならんのか」
「死んでも治らないっすよ。ちなみに女好きじゃなくて幼女好きです。守備範囲は十五歳まで」
件の幼女好きは携帯電話を二台所持しているが、どちらにも十代アイドルの画像が大量に保存されていた。
「最近は地下アイドルにはまってるらしいっす。この前の土日も遠征してきたとか」
「・・・あいつがいつか逮捕されないことを祈る」
部下の未来に嘆きながら、佐藤は思い出したように話を変えた。
「そうそう、本日から配属された小野寺だ。東川と組むことになる。本当はちゃんと朝礼で紹介したかったんだが、どうもそんな雰囲気じゃないな。小野寺、簡単に挨拶だけ頼む」
佐藤の背後で佇んでいた小野寺は名前を呼ばれると緊張したように背筋を伸ばして捜査員たち全体に向けて挨拶をした。
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