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「小野寺真です。よろしくお願いします」
配属初日ということで、前日に床屋にでも行ったのか、さらさらの髪にスッキリとした鼻とあどけなさの残った目が印象的な青年だった。そんな新人の元に、一人の捜査員が歩み寄る。
「おはよう。俺が東川・・・東川守彦。よろしくね。小野寺ちゃんって呼ぶからねー」
小野寺とのコンビを命じられた東川は、長身で柔らかい物腰の男だった。少し癖のある髪と無精髭が彼のトレードマークだ。屈託のない笑顔は彼の武器の一つだった。
「配属初日に立てこもりなんて運悪いねー」
「が、がんばります」
「肩の力抜きな、平気平気。・・・新人君には、まずは慣れてもらうことからかな。・・・あ、冬夜ちゃん、正治ちゃんに連絡しなよ。今度実家が喫茶店の東川さんが旨いコーヒー豆プレゼントしてあげるからって」
「へいへい」
気のない返事をしながら、冬夜と呼ばれた男は携帯を取り出した。ついでにという感じで小野寺に挨拶をする。
「俺は冬夜。よろしくな」
そう挨拶された小野寺は不思議そうに首を傾げる。冬夜、というのは名前だろう。本来自己紹介は名字、もしくはフルネームを言うものではないだろうか。
そんな小野寺の疑問を察した東川が苦笑しながら補足する。
「小野寺ちゃん、彼は乙女冬夜。自分の名字大っ嫌いだから冬夜ちゃんって呼んであげな。ムカついたら遠慮なく乙女ちゃんって呼ん「余計なこと喋ってんじゃねーよ東川!」
乙女の怒鳴り声が公道に響いた。
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