第1章

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「これからオフシーズンやから、 ええよ。 俺も久しぶりに呑みたいわ」 タオルで蒸された顔は気持良く、 ちょっと緊張が解れた気がする。 少し照れたように微笑んで見せると、 矢代も照れくさそうに目を細めて笑った。 高校時代は全国クラスの陸上競技会で必ず会うライバルだった。 西の矢代に東の渡辺。 槍投げという日本ではマイナーな種目で、 俺達は毎回しのぎを削っていた。 高校三年間は俺が優勝を独占。 でも、 その後、 同じ大学に入ってからは、 国内で矢代に敵うヤツは誰一人いなかった。 そして俺はアスリートの道を諦め。 無難に就職。 矢代は関西の大手食品会社に就職し、 会社の看板を背負いプロの槍投げ選手として今も活躍し続けている。
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