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そう言って矢代がバスルームに消えた。
「何やってんだ…俺」
ガックリと項垂れた先に妙なものを見つけてしまう。
(ん―――?)
わき腹の下、
腰骨の辺りが小さく赤くなっている。
(え――? ちょっと待って)
キスマーク?
(いや、
どこかにぶつけたのかも…)
しかしどう見てもキスマーク?
(ないないないないっ――)
ない。
もうない。
見なかった――。
動かぬ証拠に記憶が甦ってきたのか、
なんだかちょっと夢だか現実だかわからない断片が頭の中を過ぎる。
『長谷川さ…ん』
『ナベやん…ええの? とーるちゃんの代わりが俺でも』
――それはきっと、
思い出してはいけない記憶。
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