第1章

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「はい! 是非!」 上野の美術館で彼らは出会った。 一枚の大きな油絵の前で。 年に一度ほど、 この美術館では一般公開の前に芸大の講師達が各学校から数名ずつ招待され、 勉強会のようなものが行われていた。 今回は有名な彫刻家と、 その友人であった画家の作品をコラボレートした展覧会で、 M美大からは彫刻科の長谷川と油彩科の香曽我部が選出されていた。 ――二人は、 以前から見知っていた。 名前とお互いの作品だけを。 新作が発表されるたびに共感し、 他のどんなアーティストの作品より、 深く心に刻み込まれた。 どんな人物なのだろうと互いに思っていたが、 同じ構内に居ながら会いに行くことも無く、 ただ次の作品を心待ちにしていた。
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