第1章

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その作った表情が会話を暗くさせないための好意的な意思表示と知って答えた長谷川の表情は凛々しく、 同じように言葉の真意を汲み取った香曽我部は表情を改める。 「なるほど。 …楽しみにしてるよ」 真摯に響く声音は優しく、 微笑んだその面立ちを裏切ることなく、 穏やかでまっすぐだった。 この短い会話で互いの人となりを察した二人は、 しばし見つめあい、 ふわりと陽だまりのような微笑をかわした。 それで――、 十分だった。 「ありがとうございます。 香曽我部さんも、 毎回テーマは 『愛』 ですよね?」 うん。 と頷く香曽我部の顔色が少し曇る。
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