第1章

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もうすでに初対面という壁を越え、 同じ芸術の道を志す同志を見る目で、 彼は長谷川に心を打ち明け始めた。 「そうだね。 母と子の愛が一番多いけれど。 でもそれが描きたいからなのか、 それともそれが描きやすくてウケがいいからなのか、 …自分でもわからなくなってきてしまった」 「そんな…」 「ねぇ。 長谷川君。 人が誰かを強く愛している瞬間。 て、 目に見えると思うかい?」 「…思います」 凛とした表情で目の前の大きな油絵を見上げる長谷川の返事には、 迷いがない。 「そうだね。 僕もそう思う」 同志の横顔を見つめる香曽我部の眼差しは先ほどとは違い、 室内だと言うのに眩しそうに眇められていた。
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