願い事は何

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「ユウトくんだ」 茉奈は泣き止んで男の子を見やる。 男の子の傍らに立つキャメルのコート姿の女性も眼差しを向けた。 「実紗(みさ)ちゃん」 思わず呼び掛けてから、この呼び名はもう馴れ馴れしいかもしれないと思い当たる。 相手は一瞬、凍り付いた風に切れ長の目を見開いたが、すぐに遠慮がちな、よそゆきの微笑を浮かべた。 「高野くん」 涼しげな目も、柔らかそうな栗色の髪も、彼女と手を繋いだ男の子はそっくりだ。
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