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「ヒロ叔父ちゃん、早く早く!」
五歳の茉奈(まな)は真っ赤な着物の肩を揺らして笑う。
これは姉が小学校に上がるくらいの年に着ていたお古だ。
まるで子供に戻った姉に手を引かれている気がする。
「下駄だから、足元に気を付けてね」
年の瀬に二人目が生まれたばかりの姉はまだ床から離れられず、母親も赤ん坊の世話、父親も痛風で足の調子が悪いとあっては、自分がこの姪の相手をするしかない。
「おみくじ、絶対引こうね!」
小さな子って楽しみがあれば寒さを感じない機能でも付いてるんだろうか。
新春の晴れ空の下、三十三歳にもなる自分には「寒い」「早く帰りたい」が先に来る。
そもそも、正月の近所の神社になど行きたくない。
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