願い事は何
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「もう帰る」 俯くと、艶やかな黒髪に挿した朱色の花簪まで萎れて見える。 「もういいのかい」 「うん」 こちらの手を握ってくる小さな手は思いの外、冷えきっていた。 これでやっと帰れるのに、何故か嬉しくない。 「やだ」 参拝を終えて出口に向かう列に紛れて数歩も行かぬ内に茉奈は小さな顔をクシャッと歪める。 「おうち帰るのやだ」 大きな目から涙が伝った。
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