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「いい子だから帰ろうよ」
結婚中は子供が欲しかったはずなのに、今はこの子の世話が日常でなくて良かったと思う。
「いい子、いやだ」
真っ赤な晴れ着に涙の粒が落ちて滲みる。
列から離れ、屈み込んでハンカチで涙を拭こうとすると、幼い相手はイヤイヤする風に小さな両手で目を覆った。
「おうち、赤ちゃんがいる。ママ、具合悪くて遊んでくれない」
この子は大人の顔色を窺う。
そう語ったのは、姉ではなく母だ。
茉莉よりあんたの小さい頃に似てる、とも。
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