第一話 実家の自室の窓から入ってきた阿呆狐

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その時、瞬間移動したかのように"何か"が私の背後に立った。振り向くが何も無い。"何か"の気配がまた移動し始めた。まるで私の周りを走り回っている様な気がする。見えないのに、何故かわかる。 「誰なの!?ねえ、姿を見せて!お願い止まって!」 走り回る"何か"は止まらない。イラッと来たのか、怒鳴り声に近い(いや怒鳴り声か)叫び声で叫ぶ。 「ぅおいてめぇ止まれやぁぉおいぃ!!」 "何か"はぴたっと走るのをやめて、その場で止まった。今の叫び声に自分もびっくりした。不良ママの遺伝子とは恐ろしいなと一瞬思った。 "何か"は周りからいなくなった。いや、その部屋から消えたとは言っていない。その"何か"は、今天井にいる。ゆっくりと天井に顔を向ける。 ...とうとうその"何か"がハッキリと見えた。 平安時代の陰陽師が着てそうな服...いや着ているかもしれない、輝くような黄金色の髪、尖った耳、尻尾が1、2、3、4、5、6、7、8、9本、ドSっぽいつり目と表情、それは一言で言えば"美形男子に化けた九尾狐"だった。あれだ...ケモ耳と尻尾のイケメン男子とかいるじゃないか(いやいないだろ)、あんな感じだ。 そいつは飛んでいる、いや浮いている?どっちも同じ意味か...。そいつは天井から私を見下ろしていた。というか見下していると言った方がいいか?というか今思うが、こんなやつを相手に冷静でいられる自分が凄い。     
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