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私は今、山の頂上に立っていた。そして一番驚いたのは、ここに咲く桜の大木以外の木々が全て枯れていたことだ。枝が折れているものがあれば、傷跡が残っているものもある。全ての木々が花を咲かせていない。花どころか、緑すらもない。まるでここにある大木に命を吸い取られたかのような光景だった。枯れ木に囲まれて咲く桜の大木。美しくも何処か不気味だった。
何より異常だったのが、大木のそばに彼岸花がたくさん咲いていた。周りを囲むように。
「...何これ。ちょっと白夜!!悪戯とかふざけないでよ!戻して!早く元の世界に戻してよ!!」
大声を出して白夜を呼び出す。しかし声も姿形も何も見えない。気配すらも感じない。白夜はここにいないのだろうか?
失敗したのだろうか?それとも私が考え事しすぎたから?とにかく何がなんでもここからでなければ...。
__ガサッガサッガサッ
足音が聞こえた。ゆっくりとこの山を登る足音。私の目の前にある大木の後ろから聞こえる。反対から聞こえる。
ガサッガサッガサッ
怖い。でもその反面好奇心が勝ってしまう。一体誰が来たのだろうか?白夜なのか?それとも違う人?それを確認したいという好奇心が私の背中を押す。
足音が近づくと、ピタリとやんだ。いや、止まったのだろうか。ゆっくりと、その誰かがいる大木の後ろからそっと覗く。
そこにいたのは、女性だった。
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