第五話 1年間に何百人死んでると思う?

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きっと渡村先生のことが好きになったあの女子生徒だって、叶えたい思いがあったんだ。それが叶えられなくて悔しかったんだと思う。ミリアさんを殺して、やっと1歩近づけたと思ったんだろう。好きな人に。それに失敗して、さぞかし悔しかったんだろう。だから死んでもなお追いかけてる。 「...立て、魔夜。」 手を差し伸べる白夜。私はその手をしっかり掴み、ゆっくり立ち上がった。 泣こうとしたわけじゃない、なのに涙が自然と溢れてくる。溢れる涙を拭き、何とか立ち直ろうとする。 「...そっか...お母さんに会いたかったんだね...。」 病院には悪い怨念がある訳では無い。こうして無念を晴らせずに死んで言った人だっている。しかし何がここの病院に異変をもたらしているのだろうか。 「...もう泣くなって。阿呆。さっさとこっから出るぞ。」 「うん...。」 白夜はぽんぽんと私の頭を叩き、またエレベーターのボタンを適当に押し始める。またさっきみたいに何か仕掛けがあるのかと見ているのだろう。 そして私はエレベーターの赤い文字を一つづつ読んでみた。 "綺麗に死にきれなくて悔しい" "ごめんなさい" "山田死ね" "来世は何しようかな" "先生愛してる" "ここから出して" "助けて"...___。 ....ん? "先生愛してる" その文字だけ、他とは違う感じがした。恨んでもいない、でもその言葉からは光も温かさも感じない。闇を感じる。先生...先生....もしかして、渡村先生のこと? 「ねえ白夜、これちょっと見てくれない?」     
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