第一話 実家の自室の窓から入ってきた阿呆狐

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とりあえず居間に運んでもらい、怪我(といってもそんなに酷くない)の処置をしてもらう。やっぱりお母さんはいい人だ、こういう時にすぐ駆けつけてくれるからさ...。 「ほら、動かないの!」 「いでででで!ちょ、もう少し丁寧にやってよ!」 ...でも何より処置の仕方が雑だ。絆創膏じゃなくて包帯だし、巻き方雑だし!!本家の主(月乃家の一番上の人?的な)いわく、一人の人間の行動とは、心の表れとも言うらしい。 実はお母さん__もとい"月乃叶子(ツキノカナコ)"は、学生時代かなりの不良だったらしく、髪を金髪に染めたり、ネイルをしたり、日焼けして肌を麦色(いわゆるガングロという)にしたりして、本家の主にこう言われたそうだ。 「貴様は月乃家の恥だ!出ていけ!!」 時々体罰を受けたらしいけど、お母さんが通ってた学校では体罰が当たり前なもんだったみたいだから、体罰なんて平気だったらしい。まあ色々と直したけど...。 今も当時の性格が変わっておらず、昼間っからビールやらおつまみやら、大丈夫かと思うくらいやばい。本当にお母さんは月乃家の恥だなと今思う。 私はさっき自分の部屋の窓に貼ってあった御札がいろんな意味で破られたことを話す。お母さんはビールを飲みながら私の話を聞いていた。 「...そうね。そういうの今まで無かったから、アタシにはわかんないわ...。宗一がいればすぐに解決できるのに...。」 「そうなんだ...。」 父の"月乃宗一"は、私がまだ幼い頃に事故でなくなったらしく、真相はまだわかっていない。警察もまともに動いてくれず、納得のいかないまま捜査は終わった。本家の主はそれを聞いてもどうでもいいみたいな態度をとるし、私とお母さん、そしてお父さんと関係があった人達は、本家の主を嫌うようになった。 ...きっとそれが私に帰ってきたんだと思う。今いじめを受けているのは、そんなことなあったから...。 「とりあえず本家の人達に報告したいところだけど、あのオッサン面倒事に手を出さないからあえて言わない方がいいかしら。魔夜も黙ってるようにね。」 「うん、わかった。」 「そんじゃあ、もう一本飲むか!」 「えっ」 話が終わるとまたビールを飲み始める不良ママ。さっき飲んでたビールは既に空だったらしく、他にも空のビールが床に数本転がり落ちていた。...さっきから臭いと思ったら、そういうことか。
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